

里人のしらぬもむべや谷間なる
ふかき渕瀬に潜む心を
九月九日
白菊の咲き栄ぬる世なりせば
手に取る杯も快き哉
山郷
人は人吾は吾なり
山の奥に棲てこそしれ世の浮沈
早梅
咲がけて咲みつるこそ幸哉
春は梅にせかされこそする
寒松
雪折れし松に罪こそなかりけり
栽にし人のむくいなるらん
吹く風に積りし雪を払せて
緑もかわらぬ庭の松枝
山を出て市に遊ぶ
志々猿を友とし送る山人も
三味の音を聞く耳はあり
市に出し後、病の起りぬれば
志々猿のねたみはをろか山神の
許しも待ず市に出しは
余り病の烈ければ
死んだなら釈迦と孔子に追ついて
道の奥義を尋んとこそ思へ
|| △ ||